エッセイ

今、自分が東京に住んでいる理由

北海道で生まれ育った僕にとって、東京はずっと憧れの土地だった。

子供のときは極度のテレビっ子で、テレビ番組の中で「渋谷」や「新宿」という都会の地名が出てくるたびに、どんな素敵でキラキラしている場所なんだろう、と想いを馳せ心躍せていた。

小学校のときには、東京大学に入学したいと本気で願っていた。中学生の頃には、大人になったら東京タワーの見える高層ビルの最上階で、シャンパンを片手に地上を見下ろしたい、という下賎な夢を抱いていた。

とはいえ、地元から東京までは直線距離でちょうど1000km。物理的な距離と相まって、僕にとって東京はとても遠い存在だった。

24、25歳の時にモデルをやっていたことがある。とある撮影でスタジオ設営のため待機をしている時間に、普段東京に住んでいる担当カメラマンさんと少し話をした。

「君は東京に出たほうがいい。北海道での5年と東京での1年とが等しいくらい、時間が凝縮されている。若いうちに最低でも2年間東京で過ごせば、その先の人生も全然違って見えるから。」
そう言って楽しそうに働いている姿が、僕の目にやけにかっこよく写った。

そのときのアドバイスが、その後、ずっとずっと心にへばりついて離れなかった。時々東京には遊びに行っていたけど、そのときはなぜかまだ住む気にはなれなかった。東京に住んでいる友達の話を聞いても、「東京は住むところじゃないよ。楽しいけどつまらないよ。」と言われて、それを妙に信じてしまっていた。

その後僕は、全国行脚の旅に出掛けたり、石垣島に住んだり、世界を旅したりと、東京をすっ飛ばして自分の欲望のままに人生を生きていた。

あるとき、東京に住む大学の同期から、「俺の働いている会社に来ないか?」と誘われたことをきっかけに、悩みながらも東京に住むことを決意した。

長い時間をかけて住むことになった東京。だけど、想像していたキラキラはさしてあるわけでもなく、住んでいる人は基本的には地方から移り住んだ人が大多数だ。みんながみんな街を歩くスピードが速いわけでもなく、食べ物も北海道のものと比べるのもあれだが、美味しいとは思えなかった。

だけど、北海道の人と圧倒的に違うところもあった。人が持っている、仕事に対する情熱と旅への欲望だ。

あくまでも主観だけど、北海道には、楽しそうに働いている人が東京に比べて全然いないし、そもそも専門職の人が多く、職業の数も全然少ない。熱意のある人もいるにはいるが少なく、仕事の話をしても全然楽しくなかった。

東京には色んな仕事をしている人がいる。男女関係なく、自分の仕事について楽しそうに話してくれる人、これからの夢を力一杯に語ってくれる人がたくさんいる。仕事に疲れている人もいるけど、それ以上に熱量のある人もいる。

一番楽なのは、人がたくさんいるからこそ付き合う人を選ぶことができる。好きな人とだけいることが許される東京は、とても居心地が良い。

もうすぐ東京生活も5年目にさしかかろうとしている。「最低でも2年間」をとっくに過ぎていて、思っていたより長く居すぎた感もある。だけど、いまだに飽きることもなく、むしろまだまだ東京にいてもいいかなぁと思う。

場所を選ばないフリーランスとして働いていながら、それでもなお東京にいる頻度が高い理由は、やりたいことがあってそれに対して精一杯頑張っている人たちが僕の周りにたくさんいて、その人たちと一緒にいたいと思うからである。

自分の理想の状態は、好きな人と好きな時に会えること。

これからもワークアズライフ、仕事と生活の両方に価値を置き、人生を楽しく生きていきたいと思う。